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フレイル予防を音楽で 金剛寺介護者カフェ

2024年1月3日 | 2024年7月8日更新

※文化時報2023年11月21日号の掲載記事です。

 京都市東山区の浄土宗金剛寺(中村徹信住職)は8日、介護に関わる人が分かち合いを行う介護者カフェ=用語解説=を開いた。特別養護老人ホームビハーラ十条(京都市南区)に所属する音楽療法士の坂下正幸さんがワークショップを行い、地域の人や福祉関係者ら18人が集まった。(大橋学修)

 音楽療法では、障害の回復や身体機能の維持に向けて音楽を意図的・計画的に使い、心身の状況に応じてプログラムを変更する。今回はフレイル=用語解説=予防を目的としたプログラムで行った。

 坂下さんは「転倒、肺炎、認知機能の低下が、入院や入所の三大原因」と話した上で、東洋医学の「痛みは、気・血・水の停滞によっておこる」という考え方を例に、血流改善の必要性を唱えた。

 転倒を防ぐための下肢の筋肉の動かし方や、誤嚥(ごえん)性肺炎にならないようにするための舌や顔の筋肉の使い方を実演。「音楽を使ったプログラムが効用を発揮する」と説明し、心が弾めば認知機能の低下も抑えられると伝えた。

 ワークショップでは、金属筒で作った楽器「トーンチャイム」を配った。太鼓を打つように前に振りだすと、「コーン」という柔らかな音が響く。参加者らは、坂下さんの指揮に合わせて、楽器を使いながら唱歌を歌って、心と体を動かした。

音楽療法を体験する介護者カフェの参加者=8日、金剛寺
音楽療法を体験する介護者カフェの参加者=8日、金剛寺

 その後は、4グループに分かれて、それぞれの思いを語り合った。身近な話から介護の悩みまで、共感や助言の輪が広がり、和やかな雰囲気で進行した。

 音楽療法を初めて体験したという老人保健施設で働く女性は「うちの施設でもやってみたい。リズムに乗って、利用者さんも楽しんで取り組める。運動を兼ねている点がいい」と話した。

独居の高齢者と交流

 音楽療法士の坂下さんは、ビハーラ十条で訪問介護事業に携わる介護福祉士として20年余り活動し、一人暮らしの高齢者と接してきた。誰にも看取(みと)られることなく亡くなるケースが後を絶たず、誰とも話をしない日々が認知症を進行させていく実態を見てきた。

 地域交流の必要性を強く感じ、仕事の傍ら声楽を学んだ経験を生かして音楽療法士となった。福祉施設から地域のコミュニティー施設、お寺へと活動範囲を広げてきた。

フレイル予防について説明する音楽療法士の坂下さん
フレイル予防について説明する音楽療法士の坂下さん

 10年ほど前からは、都市再生機構が運営する団地「京都十条」(京都市南区)の集会所で介護予防のための音楽療法教室や歌声喫茶などを開いている。こどもの日には住民と協力して使われなくなったこいのぼりを集めて飾るなど、一人暮らしの高齢者が交流するきっかけづくりにも取り組む。

 近所付き合いの難しさはあるが、坂下さんは「たとえ集会に参加することがなくても、住んでいる環境に明るい雰囲気があるというだけで心が動く。それがよりよい生活を生み出す」と話した。

【用語解説】介護者カフェ

 在宅介護の介護者(ケアラー)らが集まり、悩みや疑問を自由に語り合うことで、分かち合いや情報交換をする場。「ケアラーズカフェ」とも呼ばれる。主にNPO法人や自治体などが行っているが、浄土宗もお寺での開催に取り組んでいる。孤立を防ぐ活動として注目される。

【用語解説】フレイル

 加齢によって心身が衰えた状態のこと。健常な状態と要介護状態の中間を表す用語として、日本老年医学会が2014(平成26)年に提唱した。語源は「frailty(虚弱)」。

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