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「もしバナ&てらのみ」深まる話と死生観 佛現寺

2024年1月19日

※文化時報2023年12月12日号の掲載記事です。

 アドバンス・ケア・プランニング(ACP)=用語解説=のきっかけをつくるカードゲーム「もしバナゲーム」(もしバナ)をお寺で体験する催しが、京都市中京区の浄土真宗本願寺派佛現寺で開かれた。副住職の油小路和貴さん(33)を含む8人がゲームに参加。本堂でお酒をたしなむイベント「てらのみ」を引き続き行い、「もしものための話し合い」をじっくり深めていった。(主筆 小野木康雄)

勤行後にスタート

 「前からもしバナに興味があった。素敵なご縁に恵まれて開催でき、うれしい」

 11月12日、佛現寺本堂で行われた体験会。油小路さんのあいさつの後、まず勤行が行われ、全員が本尊に手を合わせた。

 (画像:門前
キャプ:門前には「てらのみ」の看板も掲げられた)
門前には「てらのみ」の看板も掲げられた

 もしバナは、余命わずかと宣告された時に何を大切にしたいかを話し合うカードゲーム。「ユーモアを持ち続ける」「誰かの役に立つ」など、異なる内容の書かれた35枚から好きなカードを選び、プレーヤー同士が思いを分かち合う。

 今回は「もしバナマイスター」の認定を受けた同区在住の社会福祉士、橋本千恵さん(48)らが企画し、「てらのみ」などでお寺を開く活動に取り組む佛現寺が会場を提供。将来の定期開催を視野に、参加者を知り合いに限って試行した。

 とはいえ、初対面同士の人もおり、まずは軽く自己紹介。「いつか来る『その日』を考えたい」「いろいろな人と出会って学びたい」などと、参加した動機を語った。

価値観、言葉で説明

 言いたくないことは無理に言わなくていい、自分と違う価値観でも認めてほしい―。そうした注意事項とルール説明の後、橋本さんが言った。

 「皆さんが余命半年だったら、何を大切にしますか」

 参加者8人が2グループに分かれてゲームを開始。「う~ん」とうなりながら、あるいは天を仰いで悩みながら、思い思いのペースで手札と場のカードを交換していく。「半年後、死ぬしな…」「『ユーモアを持ち続ける』のカード、欲しかった」。そんな会話が交わされた。

(画像・アイキャッチ兼用:ゲーム
キャプ:油小路副住職も交えて行われたもしバナゲーム)
油小路副住職も交えて行われたもしバナゲーム

 最後まで手元に残った5枚が、自分が大切にしたいこと。このうちさらに3枚を選び、なぜ自分がそのカードを取ったのかを説明していく。

 「意識がはっきりしている」というカードを選んだ人は「死ぬ瞬間を味わっていたいから」と語り、「私の思いを聴いてくれる人がいる」を残した人は「体の苦しさよりも、気持ちの安定を大切にしたい」と伝えた。

お寺訪れる機会に

 「自分自身がどんな価値観を持っているのか。家族の間でも、知っているようで知らなかったことがあるかもしれない。縁起でもない話なんだとタブー視せず、日常の中で死について話してほしい」。橋本さんはそう語る。

 エンディングノートを書かなくても、考えるきっかけをつくり、語り合う。そんなもしバナの特徴を生かせるのが、実はお寺の雰囲気なのだという。

 参加者の一人で介護事業所を運営する株式会社Eight(大阪府高槻市)の城山いづみ代表(43)は「会議室などではなく、死に関連するお寺という場所でお坊さんの言葉を聞きながら話ができたのは、すごく新鮮だった。もしバナを通じて、いろいろな人がお寺を訪れる機会になるのでは」と話す。

(画像:もしバナカードと日本酒)
もしバナカードと日本酒

 2時間近くもしバナをした後も、あちこちで話し込む参加者の姿が見られ、そのまま「てらのみ」に突入。日本酒やソフトドリンクを傾けながら、「来年やると、結果が変わっているかも」「これをきっかけに終活の準備をしたい」などと語り合った。

 橋本さんは「油小路さんの存在とお寺の方向性が、重くなりがちな話を軽やかにしてくれたと感じる」。油小路さんは「もしバナをやった後の余韻が残り、話せる空間ができたのは、お寺ならではかも。ぜひ定期的に開催したい」と話した。

【用語解説】アドバンス・ケア・プランニング(ACP)

 主に終末期医療において希望する治療やケアを受けるために、本人と家族、医療従事者らが事前に話し合って方針を共有すること。過度な延命治療を疑問視する声から考案された。「人生会議」の愛称で知られる。

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