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避難者、支援者、家族連れ…つながる子ども食堂

2024年4月18日

※文化時報2024年3月1日号の掲載記事です。

 いろいろな人が来て、ほっこりできる場所をつくりたい。そんな願いで子ども食堂=用語解説=を始めた京都のグループが、コロナ禍で会場探しに苦労していた。最終的にたどり着いたのが、浄土真宗本願寺派のお寺と、東日本大震災の支援を手掛ける団体。宗教者を含むさまざまな人たちの協力を得て、にぎわう子ども食堂を開催できるようになった。(主筆 小野木康雄)

お寺にも通う常連

 2月18日午前11時半、京都市下京区の「キッチンNagomi」。東日本大震災の避難者の就労支援や相談窓口として開設され、現在は自前の店舗を持たない料理人たちのシェアキッチンとしても運用されている。ここで、「いっしょに食堂」と題して子ども食堂が行われた。

 この日のメニューは肉じゃが、マカロニサラダ、みそ汁。京都産米を使ったつやのあるご飯との相性は抜群で、持ち帰りを含めて34人が手づくりの家庭料理を味わった。

 その後はボランティアの大学生2人が、牛乳パックを使った野球帽の作り方を教え、子どもたちはパーツを貼り合わせた後、色をぬったり絵を描いたりして楽しんだ。

食事後は大学生のボランティアが工作を教えた
食事後は大学生のボランティアが工作を教えた

 一家5人で初めて訪れたという中山大輔さん(45)は「いろいろな場所で開催してもらえると、子どもにとってはお友達や顔見知りが増えるので、ありがたい」と話した。

 実は、中山さん一家はもう一つの会場である本願寺派明覺寺(柱本惇住職、京都市下京区)の「いっしょに食堂」に通う〝常連〟。「お寺にも、畳敷きで落ち着けるという良さがあるんですよ」と笑顔を見せた。

コロナ禍…再開難航

 「いっしょに食堂」を開催しているグループは「いただきます会」(駒井京子代表)。元々は、京都生活協同組合で食育や居場所づくりに取り組んでいた女性たちだ。東日本大震災の被災地支援でメンバーと交流のあったキッチンNagomiを間借りし、2019年9月に子ども食堂を始めた。

肉じゃがを盛り付ける「いただきます会」の古澤さん
肉じゃがを盛り付ける「いただきます会」の古澤さん

 だが、程なくコロナ禍となり、活動は中止を余儀なくされた。弁当の配布に切り替えるなど工夫しながら、開催できる場所を1年以上探し回った。お寺にも複数当たってみたが、断られたという。

 京都市社会福祉協議会を通じて明覺寺とつながり、場所を提供してもらえることになったため、21年9月から活動を再スタート。23年8月からはキッチンNagomiでも再開できた。現在は奇数月を明覺寺、偶数月をキッチンNagomiで行っている。

 「いただきます会」会計の古澤房子さん(74)は「料理上手だったりボランティア活動が好きだったり。それぞれの得意分野を生かして、みんなで一緒にできることがうれしい」と語る。

 大切にしているのは、人とのつながり。お互いに無関心な人同士をつなげたいという。「開かれたお寺の存在が、すごく大事。意識して場を提供してくれれば、地域のつながりができる」と力を込めた。

浪江に戻らず店運営

 キッチンNagomiは、東日本大震災の発生直後から避難者支援に取り組んできた浄土真宗本願寺派眞西寺(三重県四日市市)衆徒、大塚茜さん(45)が中心になって立ち上げた。避難者からの相談は徐々に少なくなってきた一方、居場所を求める声は根強いという。

「いっしょに食堂」ののれんを下げて開催
「いっしょに食堂」ののれんを下げて開催

 現在運営を担当している一般社団法人なごみの白瀬清尉さん(47)は、福島県浪江町出身。東京電力福島第一原子力発電所の事故を受け、両親と共に京都へ避難してきた。両親は22年、故郷に近い同県いわき市に移ったが、白瀬さんは「キッチンNagomiを残したい」との一心で、京都にとどまった。

 避難者の多くが故郷に帰り、関西の支援団体が活動を縮小させていく中、キッチンNagomiには被災地に心を寄せる人々が集う。平日のランチは、料理人でもある白瀬さんらが、東北の郷土料理をバイキング形式で提供。手作りの雑貨や東北の物産などを販売する月1回の「つむぎマーケット」は、貴重な交流の場となっている。

 白瀬さんは「さまざまな方々が理念に共感して、出入りしてくださる楽しいお店。できる限りこのスタイルで続けたい」と話している。

子どもたちでにぎわう「いっしょに食堂」=2月18日、京都市下京区のキッチンNagomi
子どもたちでにぎわう「いっしょに食堂」=2月18日、京都市下京区のキッチンNagomi

【用語解説】子ども食堂

 子どもが一人で行ける無料または低額の食堂。困窮家庭やひとり親世帯を支援する活動として始まり、居場所づくりや学習支援、地域コミュニティーを形成する取り組みとしても注目される。認定NPO法人「全国こども食堂支援センター・むすびえ」の2023年の調査では、全国に少なくとも9132カ所あり、宗教施設も開設している。

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