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「家族ありき」は問題 伴走型支援、宗教者に期待

2024年9月1日

※文化時報2024年6月25日号の掲載記事です。

 障害のある子やひきこもりの子の「親なきあと」について語り合おうと、千葉県船橋市の日蓮宗上行寺船橋別院は13日、「親あるあいだの語らいカフェ」を開いた。午前は一般財団法人お寺と教会の親なきあと相談室の理事兼アドバイザー、藤井奈緒さんが講演。午後は遠山玄秀副住職のファシリテーションで語り合いが行われ、計13人が参加した。(主筆 小野木康雄)

 藤井さんは重度の知的障害のある長女(21)の母親。わが子との接し方について「私も日々反省の繰り返し。『相談室』と名乗っているが、皆さんに教えてもらい、一緒に考えながら活動している」と語った。

「親なきあと」について講演する藤井さん
「親なきあと」について講演する藤井さん

 親が面倒を見られなくなった後の心配事としては、生活費や住まい、身の回りの世話、健康管理などを挙げつつ「親の代わりは存在しない」と指摘。「それでも、親にしかできない備えはある。いろいろな人たちに相談し、思いを伝え、みんなで本人の暮らしを支えよう」と呼び掛けた。

 また、8050問題=用語解説=にみられるように、親なきあとを巡る制度や契約は不十分だと強調。日本の社会福祉が長らく家族ありきで成り立ってきた半面、障害のある人が家族をつくる例は極端に少ないことが背景にあると説明した。

 その上で「家族の面倒は家族で見るべきだという考えが根強く、自己責任論や『迷惑をかけてはいけない』という〝呪いの言葉〟のせいで、他者に頼れず、自分や家族の将来を悲観してしまう」と伝えた。

 宗教者に期待する役割については、親や本人への「伴走型支援」を挙げ、お寺と教会を分かち合いと寄り添いの場にするよう提案。「親御さんとお寺のつなぎ役になれれば」と抱負を述べた。

思いを口に 考えを胸に

 上行寺船橋別院の「親あるあいだの語らいカフェ」は3カ月に1度開かれており、今回で丸1年となった。語り合いは、本堂で輪になって椅子に腰かけ、ボールを受け取った人から順番に話していくスタイルが定着。落ち着いた雰囲気の場となっている。

午後に行われた語り合い。落ち着いた雰囲気の場となった
午後に行われた語り合い。落ち着いた雰囲気の場となった

 この日の参加者らは、藤井奈緒さんの講演を聞いた感想や、障害のある人の持つ不思議な力、エンディングノートとアドバンス・ケア・プランニング(ACP)=用語解説=を巡る経験などについて、さまざまな思いを口にした。

 語り合いは2時間に及び、初めての参加者の一人は「普段考えないことを考え、聞けない話を聞けたのが良かった。また機会があれば来たい」と感想を話した。遠山玄秀副住職は「コントロールできることは頑張って、できないことは委ねる。そうして生きていきましょう」とまとめた。

 次回は9月12日に行われる。

【用語解説】8050問題(はちまるごーまるもんだい)

 ひきこもりの子どもと、同居して生活を支える親が高齢化し、孤立や困窮などに至る社会問題。かつては若者の問題とされていたひきこもりが長期化し、80代の親が50代の子を養っている状態に由来する。

【用語解説】アドバンス・ケア・プランニング(ACP)

 主に終末期医療において希望する治療やケアを受けるために、本人と家族、医療従事者らが事前に話し合って方針を共有すること。過度な延命治療を疑問視する声から考案された。「人生会議」の愛称で知られる。

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