2025年5月28日 | 2025年5月29日更新
「母の顔は写さないようにしてください」
高齢者施設で利用者の日常やイベントの様子などを写真や動画に残そうとすると、家族からこのようにくぎを刺されることが少なくありません。
このため、介護事業者の社内報やホームページなどに掲載されている写真は、ぼかしだらけのもの、背後から撮影したものばかりで代わり映えがしないのが実情です。
ある介護施設では「利用者募集やスタッフ募集に役立てば」と毎日、会員制交流サイト(SNS)の投稿をすることにしました。しかし、これまでに撮影した中で掲載できる写真は同じようなアングルのものばかり。何より利用者の表情が分からなければ、施設の楽しさを伝えることができません。
そこで取り組んだのが、全ての利用者の家族から「顔写真を出してもいい」という許可を取り付けること。そもそも家族が「顔写真を出さないように」と要望するのは、親を施設に預けていることを知られたくないからであり、その背景には「本来介護をすべき立場の自分が責任を果たしていない」という後ろめたさがあるからです。
そこで施設は「うちには嫌々利用している人が一人もいません。利用していると胸を張って言える施設を目指しています」「私たちの考え方や施設の魅力を伝えていくには、〇〇様の素敵な笑顔が絶対に必要なのです」と、根気よく説得していきました。
その結果、全家族が顔出しを許可してくれました。今では家族から「もっと母を多く登場させてください」と要望が来るほどとか。
ちなみに、SNSの投稿が功を奏し、施設には利用待機者がいるだけでなく、求人広告を利用しなくてもスタッフの確保ができているそうです。