2022年12月2日
新型コロナウイルスが流行してから「大きな声で歌う」がタブーの一つになりました。ほとんどの高齢者はカラオケが大好きですが、デイサービスでも地域の高齢者サロンでもカラオケは中止となり、寂しい思いをしていました。
そうした中、つい先日、「コロナも多少落ち着いてきたし、久しぶりに高齢者に思いっきり歌ってもらおう」と、都内で高齢者専用カラオケ大会が開催されました。会場は市民ホール。家族や高齢者サロンの仲間など大勢の聴衆の前で自慢の喉を披露できるとあって、多くの高齢者が参加を希望しました。
ある女性も出場を熱望していましたが、ステージ上での安全性などを考慮して主催者が設けた「要支援2以下」という出場規定が引っかかっていました。彼女は要介護3だったのです。
どうしても諦めきれない彼女は、家族にもケアマネジャーにも内緒で応募のはがきを送りました。主催者は、本来であれば断らなくてはならないのですが、出場への熱意があふれているそのはがきを目にして、特例で出場を認めることにしました。
さて、大会当日。晴れて出場となった彼女ですが、実は認知症を患っており、今どこにいて自分が何をしに来たのか理解できない様子でした。控室でも不穏な言動が目立ったそうです。
「これは出場中止かな」と誰もが思った時、彼女の出番がやってきました。すると背がピンと伸び、これまでとは打って変わったしっかりした足取りでステージに向かいます。きちんと一曲を歌い上げ、何と80点台の高得点を出したそうです。
「どれだけ要介護者や認知症の方でも、自分の好きなことや得意としていたことはできる」と身をもって実感した主催者は、次回から「要介護者でも可」と出場規定を見直すことを検討しているそうです。