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片手で作って着ける! バリアフリーアクセサリー

2023年4月10日

 片手で装着できるバリアフリーアクセサリーは、「ユアミューズ」(東京都江戸川区)というスクールを運営する寺崎薫氏が考案したハンドメイドのアクセサリー。「着ける、作る、教える」をモットーに、障害があっても健常者と同じように制作を楽しめる。ユアミューズの講座は基礎コースから認定講師コースまであり、ネックレス、ブレスレット、時計などさまざまなアクセサリーを片手で作れるようになる。東京での体験会に参加してみた。

 教えてくれたのは、バリアフリーアクセサリー認定講師の小島知加子さん。小島さん自身2008(平成20)年に脳出血を患い、右半身麻痺があるため、現在もリハビリや訪問介護サービスを利用している。

 元々、学生時代から洋裁やものづくりを積極的に行っていたが、片手では満足のいく制作ができなくなった。そんな中、インターネットで検索して見つけたのが、バリアフリーアクセサリーだった。今では認定講師の資格を取得し、体験会や作品の販売も行う。

体験会ではブレスレットを制作する
体験会ではブレスレットを制作する

 小島さんは名古屋市在住。年に数回、新幹線で東京に来ては、希望者にマンツーマンで体験会を行っている。筆者が体験した日も、都内のホテルの部屋で講座を開いていた。娘さんが付き添っていたが、1人で東京まで出てくることもあるという。

 ブレスレットを作ってみた。所要時間は1時間ほど。パーツの入った小袋を開けて、ビーズをテーブルに並べ、ワイヤーを固定してビーズを通すというシンプルな工程だ。好きな色のビーズを選び、いざ始めようと、目の前の小袋に思わず両手を伸ばした。小島さんにすかさず「片手で開けてくださいね」と言われ、慌てて片方の手を引っ込めた。

片手では、ぐにゃっと袋が曲がり開けにくい
片手では、ぐにゃっと袋が曲がり開けにくい

 小島さんは本来右利きだったが、右半身麻痺になってからは左手を使っている。筆者も右手が利き手だが、左手で体験してみた。最初に袋を開けるだけでも苦労する。開けたところで、中身の小さなビーズがどこかへ飛んでいってしまわないように注意しなくてはならない。静かにテーブルの上に出すだけで結構な時間がかかった。

 はさみを使って、さらに小さな袋を開ける場面もあった。「洗濯ばさみで袋を挟んで、安定させてから切るとスムーズですよ」と声を掛けられたが、うまく力が入らず、なかなか袋が切れなかった。一つ一つの手順が終わるたびに、ため息がこぼれそうになる。

 ビーズをワイヤーに通す前に、マットの上に並べて配列を確認。この工程が、バリアフリーアクセサリー作りの大きなポイントだ。両手ならいちいち並べなくてもできるのだが、片手では作業時間が約2倍かかることや、ビーズが床に落ちてもすぐに拾えないことなどを考えると、事前に並べる方が短時間で作ることができるという。

3種類のビーズがきれいに並んだ
3種類のビーズがきれいに並んだ

 接着のためにボンドを使うときは、ふたを開けて液体を必要な分だけ取るのが難しかった。押さえが必要な部分はマスキングテープが大活躍するが、テープを一つ切るだけでもひと苦労。小島さんは使う道具をうまく移動させたり、押さえるのを手伝ったりとフォローしてくれた。

 ワイヤーにビーズを通す詳しい方法は企業秘密だが、約30分でできた。健常者であれば15分もかからない単純作業だ。

当事者同士だからこそ

 体験の後半は、講座の詳しい説明や雑談になることが多いという。参加者は片麻痺になった人が多く、当事者同士だからこそ分かり合えることがあるのではないか、と小島さんを講師に選ぶそうだ。

 「一度命の危険にあった経験を持つ者同士、それぞれにドラマがあるんです。出産前に倒れた人、運転中に脳出血になった人、海外で旅行中に患った人…。お話の途中で涙を流される方もいます」。参加者は自分が病気や障害になった経緯を話し、小島さんと励まし合う。そして作ったブレスレットを大事に持ち帰るという。

マンツーマンなのでゆっくり教わることができる
マンツーマンなのでゆっくり教わることができる

 完成品を実際に腕に着けてみる。服の上から装着する方が、安定して着けやすかった。自分の腕を目にするたび、キラキラ光るかわいらしいビーズに気持ちが和む。

 小島さんのように、ある日突然病気で体が不自由になると、おしゃれをするどころではなくなる。やがてふとした瞬間、アクセサリー一つも自分の力で着けられないと気付いた時に、女性として寂しい気持ちになるのだろう。

 バリアフリーアクセサリーなら、病気をする以前のように好きなアクセサリーを身に着けられる。自分が手作りした物なら、なおさらうれしくなる。早く身に着けて外に出てみたくなるのではないだろうか。

手元が明るくなり楽しい気分に
手元が明るくなり楽しい気分に

 小島さんは片麻痺になっても、障害があるからできないと諦めず、熱中できるものを探してバリアフリーアクセサリーに出会った。名古屋から東京に出てくるのは簡単ではないが、それでも「同じ境遇に立つ人たちを笑顔にしたい」という小島さんの思いはとても純粋でビーズのように輝いていた。

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