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福祉あるある

光を与える曲作り たか&ゆうき

2023年4月16日

 福祉仏教for believeではおなじみの「たか&ゆうき」の記事第5弾。2019年に筋萎縮性索硬化症(ALS)と診断された「たか」こと古内孝行さん(42)と、介護福祉士の「ゆうき」こと石川祐輝さん(40)による音楽ユニットだ。「All Love Sings 〜ALSになっても歌いたい〜」をテーマに日々活動に励む2人が4月2日、埼玉県所沢市で開催された「世界自閉症啓発デー・発達障害啓発週間Light It Up Blue Tokorozawa 2023」に、所沢市ゆかりのアーティストとして出演した。

YS-11の前で記念撮影。埼玉県所沢市は飛行機発祥の地でもある
YS-11の前で記念撮影。埼玉県所沢市は飛行機発祥の地でもある 

 イベントの目的は、自閉症や発達障害に関する啓発。国連が定める世界自閉症啓発デー(4月2日)には、世界中のランドマークがシンボルカラーの青色にライトアップされる。賛同する国は172カ国以上にのぼるといわれ、日本では東京タワーや各地の名所・旧跡でイベントが行われている。

 所沢市は2014年から毎年開催。所沢市役所や、航空公園駅前のシンボルであるYS-11機、イマジネーションカーペット(壁泉)がライトアップされ、プロジェクトマッピングも行われる。大勢の市民が集う人気のイベントだ。

 当日、ゆうきさんは「All Love sings」と書かれたオリジナルTシャツを着用。たかさんは今回のイベント用のブルーのTシャツを着て気合を入れた。オリジナルTシャツは緑とピンクに加え、この日のために制作した新色のカーキ色と黒も販売。CDや缶バッチを並べ、少しでも興味を持ってもらえれば、と意気込んでいた。

新色Tシャツはサイズによっては売り切れになった
新色Tシャツはサイズによっては売り切れになった

 午後2時ごろ、雨が降り出した。荒れ模様の天気に、出番を待っていたたかさんは「もう中止かな」と諦めかけたという。

 2人は昨年9月に初のコンサートを行ったが、車いすで歌える会場や集客などを考えると、どこでもできるわけではない。1回1回の音楽活動が貴重な2人を、家族やボランティアスタッフが見守る。

 しばらくして雨がやみ、イベントは続行。安堵する中、2人は本番に臨んだ。

見た目では分からない障害がある

 今回の注目曲は、イベントのテーマソング。誰に頼まれたわけでもなく、自分たちで作ったという。

思いを込めて、オリジナルソングを熱唱
思いを込めて、オリジナルソングを熱唱

 「『せっかく出演するのだから、テーマソングを作ったら?』と妻が勧めてくれたんです。じゃあ、勝手に作ろうかと思って」と、たかさんが微笑んだ。

 たかさんは週2回、入浴のためにゆうきさんの勤める所沢市のデイサービス琴平に通所している。仕事後に2人で部屋を借り、音楽作りを行うのが日課だ。会わない日は、たかさんが電話をかけてイメージしている曲をその場で歌い、ゆうきさんに伝えるのだそうだ。

 その後、ゆうきさんのイメージと合わせて音を作り込み、歌詞をつけて曲を仕上げる。

 今回のテーマソングは、2、3週間で完成させた。タイトルはイベント名をそのまま使って『Light It Up Blue』とした。歌詞は、たかさんの一人息子である奏多君の発達障害を通して感じたことがヒントになっている。

 外見だけではどんな障害を抱えて生きているのか分からない人は、世の中に大勢いる。だが、決して一人ではなく、お互いに手を取り合えば共存できる世界を作れるのでは―という希望を込めた歌詞だった。

 

『Light It Up Blue』

見た目だけでは わからないでしょう

人はそれぞれ 違うものでしょう

歩みの鈍い亀だって

うさぎをいつか追い越すかも

長い道のりを自分の歩幅で

ただ歩いているだけでしょう

そう 誰でも

Light It Up Blue 照らしてよ 僕らはここにいる

Light It Up Blue 見つけてよ 君の中にある光を

心の距離は 測れないでしょう

歩み寄れたら 素晴らしいでしょう

苦手なことは誰だって

手を取り合えば 補えるはず

今は見えなくて 自分の未来が

ただ信じているだけでしょう

希望の光を

Light It Up Blue 教えてよ 何度も何度でも

Light It Up Blue 響かせよう 僕の中の祈りの歌を

僕らは(ひとりじゃない)

ひとりじゃない 手をつないで 大丈夫さ

いつでも(いつまでも)

いつまでも さぁ、うたおう!

Light It Up Blue 照らしてよ 僕らはここにいる

Light It Up Blue 見つけてよ 君の中にある光

Light It Up Blue 教えてよ 何度も何度でも

Light It Up Blue 響かせよう 僕の中の祈りの歌を

 

 たかさんは「いろんな障害があることを知って、自然と手助けをしてくれる人が増えればいいなと思います。生きやすい未来をつくっていけたら」と語った。

イマジネーションカーペットの前で歌った
イマジネーションカーペットの前で歌った

 聞いていると、さわやかな気持ちになり、自然と空を見上げたくなる。「できるだけ人に優しく、自分のペースで歩んでいこう」と自身に約束したくなる前向きな曲だった。

 大勢の観客が見守る中、2人は最後まで全7曲を歌い切った。いつも心がほぐれる温かい歌を作り続ける「たか&ゆうき」に、途中、雲の切れ間から陽光が差し込んだ。

人前に出て歌うことが一番

 公演後、2人に話し掛けにきた男性がいた。たかさんの息子、奏多君が通っていた養育園に通う発達障害のある子を持つ父親だった。「一緒に見られたらよかったけど、元気に走り回っていて」と笑っていた。

 ゆうきさんも一緒にイベントに参加したアーティスト、主催者に声を掛けられ、うれしい笑顔を見せていた。

 「やっぱり人前に出て歌うことが一番大事だと思います。ユーチューブやSNSで発信しても、生の演奏にはかなわないですよね。お客さんに見てもらえるのが何よりうれしいです」と、ゆうきさんは笑顔を見せた。

常に笑顔忘れない「たか&ゆうき」
常に笑顔忘れない「たか&ゆうき」

 今後もできる限り、難病患者のイベントなどに応募し、「爪痕を残す」ことを目標にしている。楽曲の配信も今年中にかなえたいという。

 可能性があると感じれば、果敢に参加して自分たちの音楽を広めたいという気持ちが強い。病気や障害により動けない人や、毎日生きにくさを感じる人に勇気を与える曲が、今日も所沢市にあるデイサービスの小さな一部屋で作られていく。

 

勝手に「Light It Up Blue」のテーマソングを作ってみた!!

 

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