2023年10月13日
介護人材不足が深刻な中で、介護職を志す若い世代の存在は非常にありがたいものです。大学や専門学校で介護を学ぶ学生に、その理由を聞くと「祖父母と同居していて、介護や認知症を身近に感じていた」「親が介護・福祉職だった」など、子どものころから介護と何らかの関わりがあることが多いようです。逆に言うと、そうした関わりを持たなかった若者にとっては、介護の世界で働くのはとてもハードルが高いといえるのではないでしょうか。
ある高齢者施設の求人に、来春大学を卒業する予定の女性が応募してきました。大学では介護を専門に学んでいるそうです。この施設を運営するのは大手企業ではありません。採用も、中途かパートが基本で、新卒学生が応募してくるのは初めてのこと。施設側には新卒の採用・育成のノウハウもなく「なぜ、うちに来たのだろう?」「大学で介護をきちんと学んだのなら大手に行けばいいのでは…」と、戸惑いの声が広がりました。
「とにかく、せっかく応募してくれたのだから一度会ってみよう」と面接を行ったところ、当の女性は開口一番「お久しぶりです」と施設長にあいさつします。施設長も女性の顔を見て思い出しました。10年ほど前に、施設に地域の子どもたちを招いてイベントをしたときに参加してくれた女の子だったのです。
「あのときのスタッフの皆さんの笑顔を見て『なんて楽しそうな場所なんだろう。大人になったら、自分もここで働きたい』と思いました。やっと夢がかないます」
そのせりふに施設長はじめスタッフ一同、驚くやら感激するやら。もちろん、地域の人向けのイベント開催に、これまで以上に力が入るようになったのは、言うまでもありません。