2025年1月7日
離職率が高い介護業界では、退職を申し出た社員と、退職を思いとどまらせようとする上司が「面談」する光景が日常茶飯事です。
ある介護コンサルタントが新たに関わることになった高齢者住宅では、なんと施設長以外のほぼ全員が同時に退職願を提出するという異常事態となっていました。コンサルタントの初仕事は、退職願を出した全員と個別に面談することでした。
「どうして退職しようと思うのか」と尋ねても、社員側は辞めることが目的ですから「とにかく、もう無理なんです!」などとまともな会話になりません。それでも1時間も面談していると、退職の本当の理由が分かってくるそうです。
ある社員の退職理由は「共用部のソファが破れている」というものでした。
「中のスプリングが飛び出てしまっている。利用者が座ったら危ない」と会社に訴えていましたが、対応してくれなかったことから「この会社は、利用者のことを考えていないし、私たちの言葉に耳を傾けてくれない」と愛想を尽かしてしまったのです。
取りあえず、安いソファを購入したことで「もう少しここで頑張ってみます」と退職を思いとどまってくれたそうですが…。
この一件を社長に話すと「そんな簡単なこと、言ってくれたら対応したのに」と、初めて聞いたような反応でした。
おそらく、社長は報告を受けていたのでしょう。しかし「ささいなこと」と感じて後回しにしてしまったのではないでしょうか。
会社全体にとっては「ささいなこと」かもしれませんが、それを訴えた社員にとっては「重要なこと」です。「このギャップに経営陣が気付かない限り、離職率は低下しないだろう」と、このコンサルタントは警鐘を鳴らしていました。