2023年4月15日 | 2024年10月15日更新
熱い心と、冷たい頭を持て。
――元国連難民高等弁務官、緒方貞子(1927~2019)
日本人初の国連難民高等弁務官として知られる緒方貞子さんは、東西冷戦が終わりを告げた1991年から10年間、世界で紛争が相次いだ難しい時期に、その任に当たりました。人命を救うための最善の選択を常に考え、柔軟な対応で難民・避難民の支援に当たるとともに、救援活動の政治利用には断固として抵抗しました。
そんな緒方さんが心掛けていたことが、「熱い心と冷たい頭」でした。
困難に直面しても諦めない情熱と、あふれんばかりの共感。冷静な思考と、機転の利く判断ができる頭脳。それらを併せ持つことが重要だというわけです。
実はこの言葉、福祉の世界ではよく引用されます。元々は英国の経済学者、アルフレッド・マーシャル(1842~1924)がケンブリッジ大学で社会福祉を志す学生たちに語った言葉だそうで、社会福祉の大家、一番ヶ瀬康子さん(1927~2012)が好んで使っていたとのことです。
一方、仏教には「冷暖自治」という禅語があります。水が温かいか冷たいかは、実際に飲まないと分からない―という意味で、悟りは人から教えられて理解できるものではなく、本人が悟らなければ理解できないと伝えています。
「熱い心と冷たい頭」もまた、実際に行動してみて初めて自覚できることなのかもしれませんね。だからこそ、行動するときには忘れずにいたい言葉でもあるといえるでしょう。