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生きることば

スミレはただスミレらしく

2023年12月15日

春の野に咲くスミレはただスミレらしく咲いているだけでいい。
――数学者、岡潔(1901~78)

生きることば

 世界的な数学者、岡潔をご存じですか?

 世界中の数学者を悩ませた難問「多変数関数論」の三つの大問題を解き明かしたことで知られ、1960(昭和35)年には文化勲章を受章しました。後世の学者たちにも多大な影響を与えています。

 そんな岡潔は、随筆家でもありました。数学と随筆とは一見関係ないように思えますが、計算や論理を超えたところに“数学の本質”を捉えた彼にとっては、近しいものだったのでしょう。「情緒」という言葉をキーワードに、数学について思考し、いくつもの随筆を残しました。

  岡潔が書いた随想「春宵十話」の中に、こんな一節があります。

よく人から数学をやって何になるのかと聞かれるが、私は春の野に咲くスミレはただスミレらしく咲いているだけでいいと思っている。咲くことがどんなによいことであろうとなかろうと、それはスミレのあずかり知らないことだ。咲いているのといないのとではおのずから違うというだけのことである。私についていえば、ただ数学を学ぶ喜びを食べて生きているというだけである。

 岡潔にとって「数学を学ぶ喜び」それ自体が生きる糧であり、その行為にどんな意味があるのか、どんな影響をもたらすのかと思い悩む必要はないと考えていたのでしょう。

 これを聞いて、以前ご紹介したアンディ・ウォーホルの「物事を見過ぎることで、それが持つ意味が全く見えなくなることを僕は怖れる」という言葉を思い出してくださる方もいるかもしれません。岡潔の言葉はそれ以前の、物事の意味をあれこれ考えること自体から私たちを解放してくれます。

 皆さんもふと、「今自分がしていることは、他人から見て意味があるのだろうか」と不安に思うことがあるかもしれません。その時はぜひこの言葉を思い出してください。他人から見て取るに足らないものだったとしても、自分の喜びを否定する必要はないのです。

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