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インタビュー

橋渡しインタビュー

「本当の介護」を自ら知る 平井貴明さん㊦

2022年10月24日

 異業種から介護職に転身してきた当初、ハッピーホームデイサービス(埼玉県所沢市)代表の平井貴明さんは、いくつかの施設や訪問介護サービスで研修を受けた時、釈然としない思いを持った。

 介助の動作一つをとっても、何のためにやっているのか理解しないまま、仕事をしている介護士が多かったのだ。「どうしてこの動作をやるのですか」と質問しても、明確に答えられない。それで毎日の業務をこなすことが、不思議でならなかった。

調理の際は利用者に皮むきをお願いすることも
調理の際は利用者に皮むきをお願いすることも

 例えば、介護現場ではよく見かける指体操。両手を広げ、数を数えながら、同時に指を折っていく体操だが、それにも意味がある。

 「脳の血流を促す効果だけでなく、脳卒中を確認するために行っています。毎朝同じことをすれば、ある日突然できなくなった人がいた場合、介護士が早期発見して看護師に伝えることができますよね」

 介助にも必ず根拠があるが、実際の現場では周りの先輩たちの動きをまねて、なんとなくしてしまうケースは多い。

 介護職は収入が決して高いとはいえないが、楽しみながら学ぶことで「本当の介護」を知る人が増えてほしいと、平井さんは願っている。

外出レクで気分転換
外出レクで気分転換

時代の変化に柔軟な介護を

 今後、介護がどのような方向に進むのか、平井さんは情報収集を怠らない。他の施設で新しい取り組みがあれば同じように導入を試みる。現在は利用者が役割や生きがいを持てるよう、利用者自身が有償ボランティアとして謝礼を受け取れる仕組みづくりに取り掛かっている。

 利用者がコーヒーショップ駐車場の植木を手入れし、お礼にコーヒーをごちそうになる。配送業者からデイサービスに届く荷物の受け取りを、利用者が行う…。そうしたレクリエーションではない活動を想定している。もちろん強制ではなく希望を募り、利用者自らがやってみたいと名乗り出た時に、施設側で連携する企業と計画を立てる構えだ。

 平井さんは「他の施設では、以前から取り組んでいます。所沢市ではなかなか許可が下りませんでしたが、ようやく乗り出せることになりました。とても楽しみです」と、朗らかに話す。

書道レクで集中して字を書く
書道レクで集中して字を書く

 普段から、利用者本位のレクを心掛けているという。外出レクでは、近所のバラ園や動物園など、なるべく利用者の行きたいところへ車を走らせる。新型コロナウイルス感染拡大前は、「皇居に行きたい」という利用者の希望をかなえるため、結構な遠出をしたこともあった。

 「介護職は、介護保険法に記載されている自立支援と尊厳の保持、この2大目標に向かって仕事をします。結果にしっかり現れてくることなので、すごく楽しいですね」。従来の型にはまらず、新しいものを取り入れて風通しを良くする現場を、平井さんはつくり上げようとしている。

行事の前は利用者と介護士がみんなで準備
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