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インタビュー

橋渡しインタビュー

心とつながるリハビリを 窪寺敬浩さん

2022年11月29日

 東京都内の訪問看護リハビリステーションで理学療法士として勤務する窪寺敬浩さん(44)は、毎日自転車で地域を駆け回り、介護保険を利用する高齢者の自宅を訪問する。利用者や家族、ケアマネジャーの希望を聞きながら、医師の指示の下、一人一人に合ったベストな運動の指導やマッサージを行っている。

 窪寺さんは1978(昭和53)年、東京都生まれ。30歳から医療専門学校で学び、理学療法士の資格を取得した。病院勤務の経験後、現在は訪問看護リハビリステーションで働いている。

 理学療法士は、患者ごとに病気やリスク情報を把握する。体のことだけでなく、今までの暮らしぶりや生活状況を知り、自宅に戻ってからの動作を想定して、医師や看護師らと患者の治療方針を共有する。立つこと、座ることなど今まで当たり前にできた動作や、歩くための筋肉を少しでも回復できるよう、リハビリに努めている。

いつも笑顔の窪寺さん
いつも笑顔の窪寺さん

 窪寺さんの前職は公務員だったが、仕事中に腰を痛めたのを機に退職した。高校ではラグビー部、大学時代はスポーツジムでアルバイトをするなど体を動かすことが好きだった窪寺さんに、弟が理学療法士への転職を勧めてきた。「病院でリハビリの仕事?自分で治すのではなくて?」。スポーツで何度かけがをした過去を思い出し、興味を持って勉強を始めた。

体を動かせなくなる意外な背景

 理学療法士の勤務先は、医療機関が約8割といわれる。窪寺さんも資格取得後は病院で勤務した。病棟ごとに急性期、回復期、維持期(療養型)、訪問と四つの分野に分かれ、窪寺さんはそれぞれの病棟でリハビリをする患者と向き合った。

 リハビリとは本来、日常生活への復帰を目指すこと。リハビリが生きてくるのは、退院して自宅で生活を始めてからだと、窪寺さんは考える。院内の様子だけでなく、患者のその後を見守りたいという気持ちから、訪問専門の理学療法士になった。たわいのない話をしながら家の前を歩いたり、部屋の中でマッサージをしたりしながら信頼関係を築き、患者の心とつながる仕事に魅力を感じている。

自転車で移動は体力勝負!全ての利用者宅を訪問する
自転車で移動は体力勝負!全ての利用者宅を訪問する

 「筋肉を鍛えるよりも、まずは関節を柔らかくして軸を整え、筋肉を働かせやすくすることが優先だと思っています。“リハビリ=筋トレ”だと思う方も多いのですが、その前にやることがあります」と、窪寺さんは話す。

 例えば、「自分には立つ力がない」と話す利用者に対しては、立つという動きが分からなくなっているのではないかと考える。重心の移動や関節の動かし方がうまくいっていないなど、さまざまな理由がある。または、ベッドに手すりがないなど、環境そのものが整えられていない場合も多い。まずはそこを解決してから、リハビリに臨むことを勧めている。

 「病院では食事の栄養バランスが考えられ、毎日リハビリをするので、動きが良くなり回復は早いかもしれません。でも退院後は、週1〜2回程度の訪問リハビリになる方がほとんど。入院していた頃とは環境も違うので、まずは体の軸を調整してから、ゆっくり焦らずリハビリを行ってもらえたら」と話す。

頑張りすぎないでほしい

 また、日々の訪問でたびたび感じることが、利用者の家族が頑張りすぎていることだという。「私たちで全部やります」という姿勢を見せ、介護サービスをあまり入れたがらない家庭もあるそうだ。

所沢エンジェル歯科クリニックにて施術
所沢エンジェル歯科クリニックにて施術

 「ベッドからの起き上がり、立ち上がりを全介助するご家族もいますが、利用者さんがどこまでできるのか見極めた方がいいと思うときがあります。張り切り過ぎると徐々に負担になり、介護疲れから体調や気持ちを病んでしまっては本末転倒です。福祉用具やヘルパーさんなどを利用して、なるべく気持ちを楽にして過ごしてもらいたいと思います」

開業を目標に

 将来は独立し、開業したいという夢を持つ。現在は夢をかなえるために月2回、所沢エンジェル歯科クリニック(埼玉県所沢市)で予約する患者に対し施術を行っている。

 理学療法士には独立開業権がないため、いずれは整体師としての肩書きを持ち、整体院を開く予定だ。現在は栄養学も学び始め、痛みや体調不良は栄養不足も一因だと知ることができた。

 筋肉をつくるための栄養がなく、水も飲まない、たんぱく質も取らず血流が悪いといった利用者に対し、いきなりリハビリを始めても結果が出にくいのは明らかだ。そのような状況で生活を続ける利用者もいる。今後はトータルサポートができるよう努めていきたいという。

「健康だより」を作って患者さんに閲覧してもらっている
「健康だより」を作って患者さんに閲覧してもらっている

 「今は高齢者の方のみのリハビリを行っていますが、いずれはどんな年齢層の人にも施術したいです。理学療法士の経験があるからこそ、体のことや生活改善を施術で伝えていきたいと考えています」と、将来の希望を語った。

 

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