2024年10月2日
※文化時報2024年8月27日号の掲載記事です。
広島県三次市の浄土真宗本願寺派源光寺(福間玄猷住職)は17日、講演会「『親なきあと』がくる前に カードを使って考える"私の"終活」を開いた。一般財団法人お寺と教会の親なきあと相談室で理事兼アドバイザーを務める終活カウンセラー、藤井奈緒さんが登壇。講演後は「414(よいし)カード」を使ったワークショップを行い、スタッフを含む20人が対話を通じて死生観を深め合った。
414カードは、静岡県富士市でがん患者と家族の居場所づくりに取り組むNPO法人幸(さち)ハウスが2021年に開発した。代表理事で緩和ケア医の川村真妃さんが、最期まで自分らしく生き、大切なものを諦めないためには、病気の前から対話を重ねる必要があると考えたのがきっかけだったという。
「日常生活の中で普通に死生観を語り合える文化をつくるためのツール」と位置付けられていることから、藤井さんは終活について考えるきっかけにもなるとみて、営利を目的としない体験会や勉強会などで活用している。
参加者らは4人ずつに分かれて「大切な人と過ごす」「やり残したことをやる」などと書かれた49枚のカードをテーブルに広げた後、自分が死にゆく時に大切にしたい1枚を選び、選んだ理由について語り合った。
さらに、カードをめくって裏側に記された質問に答える形で対話を重ね、〝今の気持ち〟を述べ合って約40分間のワークショップを終えた。
参加者からは「絵がかわいらしく、身構えずにしゃべれる」「同じ項目を選んでも、感じることは人それぞれだということが分かった」との声が上がった。
414カードについて、藤井さんは「人の話を聞き、思いを言葉にすることで自分の心を見つめ直せる」。福間住職は「双方向の講演会になり、参加者同士の距離も縮まったように思う。今後も取り入れたい」と話した。
414カードのワークショップに先立つ講演会では、両親と祖母を20代のときに看取(みと)った藤井さんが「残された私は『迷惑』をかけられたのか?」と問題提起。終活全般に関するポイントを押さえた上で「困ったことはあったが、迷惑はかけられていない。いろいろなことを経験させてもらえてよかったと思っている」と語った。
その上で「終活は死の準備ではない。今までの人生を振り返り、これからを楽しく豊かに暮らしていけるものだ」と強調した。
とりわけ、障害のある子やひきこもりの子の親なきあとを巡る終活に関しては「制度や契約は大事なことの一部にすぎない。少しのことを手伝ってくれる人をたくさんつくるのが、大切なことだと思う」と語った。