2024年10月28日
※文化時報2024年8月30日号の掲載記事です。
本門法華宗大本山妙蓮寺の塔頭(たっちゅう)玉龍院(中道照海住職、京都市上京区)が、ひとり親家庭の親子がくつろげる場づくり「Aama.project(アーマ・プロジェクト)」を始めて3年がたった。子ども食堂=用語解説=を月1回、学習支援を月2回開くほか、子育て中の母親のための分かち合いのイベントを不定期で開催。個別相談も受け付けている。中道住職は「おばあちゃんの家のように過ごせる場でありたい」と話している。(大橋学修)
8月18日には夏休みの特別企画として、学習支援と子ども食堂、母親のための分かち合いを全て兼ねた「あまからこども食堂」を開いた。活動に協力する京都大学などの学生らでつくるボランティアサークル「からふる」のメンバー6人が、小中学生に宿題を解くための考え方を教えたり、昼食の調理を行ったりした。食後には子どもたちとカードや風船などで遊んだ。
昼食は、きゅうりの浅漬けをあしらったそうめん、夏野菜炒め、よだれ鶏の3品に、マンゴープリンとマクワウリをデザートとして添えた。1歳の子どもと参加した吉田愛さん(30)は「大学生に遊んでもらえて、とても楽に過ごせる」、別の母親は「人に作ってもらったごはんが食べられるのは久しぶり」と喜んだ。
からふる前代表で京大3回生の髙島彩矢(さや)さん(20)は「最初の頃は必要とする人に情報が伝わらなかったが、毎回参加する人もできた。来たい場所になれている」と語った。
中道住職がアーマ・プロジェクトを始めたのは、自身が子育てを1人で行う「ワンオペ育児」の経験があったためだ。子どもが10歳の時に、夫と離婚。「同じような立場の人と話したい」「ごはんを食べさせてくれる人がいればいいのに」という思いを募らせ、「落ち着いたら、自分が支援に取り組みたい」と考えていた。
転機となったのは、新型コロナウイルスの感染拡大。「誰にも会えない中で、子育て中のひとり親家庭は相当に大変なはず。立ち上がろう」。2021年7月に初めて分かち合いの場を開いた。
毎回、アロマ教室やマッサージ体験などを実施。母親にリラックスしてもらい、同じ立場の人同士で語り合えるようにした。
22年8月からは「からふる」の協力で、子ども食堂を毎月開催。昨年夏からは、第1、3金曜日の夕方に学習支援の場「Aama(あーま)学習会」を開いている。京都市ひとり親家庭支援センター「ゆめあす」(同市左京区)で紹介された人が個別に来るようにもなった。来訪者の話を聞きながら、「そうなの」「大変やね」と聞き役に徹する。
中道住職は「私自身は何もできないし、資格もない。プロジェクトを継続することで『聞いたことがある』と思ってもらい、足を運びやすい環境をつくりたい」と笑顔で語った。
【用語解説】子ども食堂
子どもが一人で行ける無料または低額の食堂。困窮家庭やひとり親世帯を支援する活動として始まり、居場所づくりや学習支援、地域コミュニティーを形成する取り組みとしても注目される。認定NPO法人「全国こども食堂支援センター・むすびえ」の2023年の調査では、全国に少なくとも9132カ所あり、宗教施設も開設している。