2023年3月31日
「介護の仕事をして役に立つことは何でしょうか」と言われて、何を思い浮かべるでしょうか?
「介護福祉士など一生役立つ資格が取れる」「コミュニケーション力がアップする」「いたわりや思いやりの気持ちが強くなる」「昔の音楽や映画、ニュースなどに詳しくなる」「体力がつく」などいろいろあると思いますが、「自分や家族の体の異常にいち早く気付く」ということもあります。
ある男性が仕事中に転倒し、病院に救急搬送されました。医師の診断は「異常なし」で、転倒時にできた顔の傷の処置を受けただけでした。ところが、後で分かったことですが、実は脳出血を起こしていたのです。
ごく微量でしたので医師も気付かず、その後の出血量もわずかずつだったため、本人にも自覚症状がなく、普通に生活をしていました。
異変に最初に気付いたのは、訪問ヘルパーをしている妻でした。食事中、汁がたっぷり入ったお椀を、男性がひっくり返したのです。
普通の人なら「もう、あなたも年ね」と笑って済ませるか、「何をやっているの!もったいない」と叱るところでしょうが、そこは介護職です。「これまで現場で大勢見てきた、脳梗塞などで体が麻痺した高齢者と同じだ」と、ピンと来たのです。すぐに病院に駆け込んで検査をしてもらったところ、脳出血が発見されました。
「人がどうやって体が動かなくなり、どのように認知機能が衰えていくのかをこの目で見てきたからこそ、夫のちょっとした体の異常を見逃すことなく、早期発見につなげることができました。この時ほど『介護の仕事をしていて良かった』と思ったことはありませんでした」。妻はそう胸をなで下ろしていました。