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ヘルプマークを新しい文化に

2023年8月9日

 岐阜県ヘルプマーク普及啓発大使の塚本明里さん(33)は三つの難病と闘い、17年目になる。普段は車いすタレント・モデルとして活動しており、最も力を入れているのがヘルプマークの普及だ。ここ数年でよく見かけるようになったヘルプマーク。赤字に十字とハートのマークが目印だが、一体何のために使うのか、どういった意図があるのかは、まだまだ浸透していない。塚本さんが感じるヘルプマークの重要性について聞いた。

外見では分からない障害を知らせる

 ヘルプマークとは「援助や配慮を必要としている人々が、そのことを周囲に知らせることができるマーク」である。

岐阜県ヘルプマーク普及啓発大使の塚本明里さん
岐阜県ヘルプマーク普及啓発大使の塚本明里さん

 東京都が2012(平成24)年10月に都営地下鉄大江戸線でヘルプマークの配布や優先席へのステッカー表示を行った。その後、17年には日本工業規格(JIS)の案内用図記号(ピクトグラム)となり、全国共通のマークとして導入。今では街なかや交通機関などで、バックやリュックに付けて歩く人を頻繁に見かけるようになった。

 ヘルプマークの対象は、障害や難病患者はもちろん、発達障害や精神疾患のある人、妊娠初期の女性も含まれる。外見では分からなくても、困ったときには周囲の配慮や援助を求められるようにと作られた。申し出があれば各都道府県で無料配布されている。

 岐阜県では17年にヘルプマークが導入されたが、当初なかなか県民に浸透されにくい状況だった。塚本さん自らSNSでヘルプマークの普及活動を頻繁に発信したことで、県ヘルプマーク普及啓発大使として任命された。

 塚本さんは筋痛性脳脊髄炎、線維筋痛症、脳脊髄液減少症という三つの難病を患っている。クリニックに通院し、麻酔注射で痛みを抑え、頭を起こしていられる時間は30分。失神しないように常に横になり、時に車いすから体を起こし、立ち上がって歩く様子が驚かれ、飲食店では横になって食事をしている様子を怪訝そうに見られる。周りの視線を気にしながら過ごすことがある中、ヘルプマークを身に着けていることで安心感を得られたという。

 「ヘルプマークを持っていると、周りに分かってくれている人がいると感じました。とても安心できるので、まずは見守ってもらえたらうれしいです」と話す。

支援する側は何ができるか

塚本さんは現在、ヘルプマークを身に着けた人を支援する側に対して行う「ヘルプマークサポーター」の研修会を行っている。

ヘルプマークサポーターの研修会の様子
ヘルプマークサポーターの研修会の様子

 研修の内容は、障害の種類や支援方法について学び、理解を深めること。子どもから大人まで幅広い世代が受講できる。

 ヘルプマークの裏面には、症状や緊急連絡先、病院名などが記されている。中には「救急車を呼ばないでください。静かな場所に移動すれば落ち着きます」と、搬送する手配をしないようメッセージを書く人もいる。

 一方で、ヘルプマークを着けて電車の優先席に近づいても、席を譲ってもらえずつらい思いをした人や、差別や偏見に合ったという声は少なくない。

 
子どもたちに正しい支援の方法を伝えたい

 ヘルプマークサポーターの研修会を行うことで、塚本さんが強く感じたのは、子どもたちが正しく理解する必要性だ。

 「残念ながら、純粋な子どもを狙ってヘルプマークを悪用する大人がいないとも限りません。子どもの安全と防犯を兼ねたサポート方法を伝えなくてはいけないと思っています」

ヘルプマークで共に暮らしやすい社会を望んでいる
ヘルプマークで共に暮らしやすい社会を望んでいる

 
 子どもが支援する場合は、自分たちだけで対処しようとせず、まず信用できる大人を呼ぶことが大切だ。

 塚本さんは2021年、岐阜大学で学生に向けてヘルプマークのゲスト講師として招かれたのを機に、子ども向けのヘルプマークの啓発動画を制作。脚本・出演は全て学生が行い、地元の小学生も登場するなど、地域に協力を得ながら完成させた。動画を見た子どもがヘルプマークを理解し、正しい支援方法を伝えることが狙いだった。

 「私の案が全て正解とは限りません。いろいろな意見があるので、他の人たちの声も聞きながら一緒にヘルプマーク文化をつくっていきたいです」

 これからも困っている人の助けにつながることを信じ、普及活動を続ける。

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