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宗教との連携探る 日本在宅医療連合学会

2022年12月26日

※文化時報2022年11月1日号の掲載記事です。

 質の高い在宅医療の実践を目指す日本在宅医療連合学会(石垣泰則代表理事)の第4回地域フォーラムが10月22、23の両日、京都市左京区の京都府立京都学・歴彩館などで開かれた。オンラインを含め約400人が参加。医療者・介護者に加えて宗教者らが発表や聴講に臨み、地域包括ケアシステム=用語解説=への参画を模索した。

臨床宗教師に期待の声

 実行委員長を務めた山科病院(京都市山科区)消化器外科部長、荒金英樹氏は、開会式のあいさつで「さまざまな多職種連携のモデルが提唱されている半面、医療・介護の世界は閉鎖的と見られがちだ」と指摘。「一般の人とのまちづくりをテーマにしたい」と述べた。

 2日間で行われたプログラムは、シンポジウム五つ、パネルディスカッション八つ、近畿支部立ち上げプロジェクト三つ―など。

 このうち「臨床宗教師=用語解説=と地域包括ケアシステム」には、龍谷大学大学院教授で関西臨床宗教師会理事の森田敬史氏と、臨床宗教師と協働する訪問看護ステーション「仁」(同区)所長の鵜飼亜由美氏が登壇した。

臨床宗教師をテーマにした発表=22日
臨床宗教師をテーマにした発表=22日

 森田氏は、長岡西病院(新潟県長岡市)ビハーラ病棟の常駐僧侶として勤務していた際、余命いくばくもない患者から「3分でいいから、何も話さず、そこにいて」と頼まれた経験を紹介。東日本大震災を契機とした臨床宗教師の成り立ちを、医療者・介護者に伝わりやすい言葉で解説した。

 鵜飼氏は「患者からの答えのない問いに、医療者は返答に困るが、誰もが答えを求めているのではない」と指摘。臨床宗教師は、傾聴に時間を割けない医療者・介護者に代わって個別に思いを聞き、家族やスタッフのグリーフ(悲嘆)ケアができると語った。

 座長の梅山医院(京都府大山崎町)院長、梅山信氏は「海外の医療機関には常勤の宗教者が当たり前にいる。心のケアを目的とし、勧誘しない宗教者の存在が、医療の質の向上につながる」と訴えた。

 聴講した乙訓医師会(同府長岡京市)の下尾和敏会長は「臨床宗教師は、神仏に救いを求めるので人々の心のよりどころとなれる。診療報酬に位置付けるなど、普及が必要ではないか」と話した。

寺院・教会が地域つくる

 22日のシンポジウム「医療と宗教」は、見守りや助けを必要とする人のためのまちづくりに、医療者・介護者が宗教者といかに連携できるかを、宗教者の実践例から考えた。

宗教者のまちづくりに関する事例が紹介されたシンポジウム=22日
宗教者のまちづくりに関する事例が紹介されたシンポジウム=22日

 浄土宗願生寺(大阪市住吉区)の大河内大博住職は、訪問看護ステーションの設立を起点にした自坊の取り組みを紹介。障害の有無や老若男女を問わず、「住民を地域共生の当事者と見て、いろいろな場づくりをしている」と語った。

 日本聖公会京都聖マリア教会(京都市左京区)の藤原健久司祭は、街の飲食店を借りて自らバーテンダーやマスターとなる「牧師バー」「牧師カフェ」などの活動について説明。「福祉や社会活動を専門としない宗教者が、ほんの1人でも支えるセーフティーネットになれれば」と話した。

 座長を務めた仏教福祉グループ「ビハーラ21」(大阪市平野区)理事・事務局長の三浦紀夫氏は、制度のはざまで医療者・介護者が手を出しづらい状況でも、宗教者なら関与できると指摘。

 同じく座長のおかやま在宅クリニック(京都市中京区)院長、岡山容子氏は「医療・介護と宗教が、地域のインフラになっていくことが重要」と締めくくった。

入棺体験にぎわう

 日本在宅医療連合学会第4回地域フォーラムの会場では、関西臨床宗教師会(野々目月泉会長)が入棺体験と傾聴移動喫茶「カフェデモンク」を行い、大勢の医療者・介護者が訪れた。

 入棺体験は、照明を落とした教室に3基のひつぎを置き、僧侶らが交代で読経。参加者は記念写真を撮ってもらいながら、約5分間の体験を味わった。「こんなに居心地がいいとは思わなかった」との声や、MRIと似ているといった医療者らしい感想も聞かれた。

ひつぎに入って記念写真を撮ってもらう医療者=22日(画像を一部処理しています)
ひつぎに入って記念写真を撮ってもらう医療者=22日(画像を一部処理しています)

【用語解説】地域包括ケアシステム

 誰もが住み慣れた地域で自分らしく最期まで暮らせる社会を目指し、厚生労働省が提唱している仕組み。医療機関と介護施設、自治会などが連携し、予防や生活支援を含めて一体的に高齢者を支える。団塊の世代が75歳以上となる2025年をめどに実現を図っている。

【用語解説】臨床宗教師(りんしょうしゅうきょうし=宗教全般)

 被災者やがん患者らの悲嘆を和らげる宗教者の専門職。布教や勧誘を行わず傾聴を通じて相手の気持ちに寄り添う。2012年に東北大学大学院で養成が始まり、18年に一般社団法人日本臨床宗教師会の認定資格になった。認定者数は21年9月現在で214人。

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