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地域とともに 親なきあと講演会、広島のお寺も

2023年5月23日

※文化時報2023年4月25日号の掲載記事です。

 広島県三次市の浄土真宗本願寺派源光寺(福間玄猷(げんゆう)住職)は15日、障害のある子やひきこもりの子の世話を親ができなくなることに備える「親なきあと」に関し、初の講演会を開いた。「地域の人と俱(とも)に生きたい」と題したシリーズ第1弾。地元や広島市内から当事者家族と専門職ら22人が参加し、親なきあとの学びへ一歩を踏み出した。

講演会が行われた源光寺。中国自動車道三次インターチェンジのすぐ近くにある
講演会が行われた源光寺。中国自動車道三次インターチェンジのすぐ近くにある

 一般財団法人お寺と教会の親なきあと相談室(小野木康雄代表理事)の支部開設記念講演会。源光寺は広島県内初の支部として、4月、6月、8月に講演会を開き、家族らが気軽に相談できるお寺になることを目指している。

 この日の講演会は、重度の知的障害がある長女の母親でもある藤井奈緒理事兼アドバイザーが登壇。親たちには「私が死ぬときはこの子を連れていく」との切実な思いがあることを紹介し「契約や制度をくまなく使ったところで、親は安心して生きられるわけではない」と語った。

 だからこそ、親の会やお寺・教会などを介した「互助」の関係で補う必要性があると強調。「子どものことを一番知っているのが親ではなく、お世話になっている周囲の方々という関係づくりが理想」と指摘した。

講演する藤井奈緒理事兼アドバイザー
講演する藤井奈緒理事兼アドバイザー

 講演後には専門職の紹介と、8050問題=用語解説=などに関する質疑応答も行われた。知人の子どもが統合失調症という三次市の崎元洋子さん(73)は「行政にはできないこともあるので、専門家の方が身近にいてくださると救われる。いい活動をされているのが分かって、本当に良かった」と話した。

専門職連携 チームで対応

 お寺と教会の親なきあと相談室は、財団本部に役職としてアドバイザー8人を配しており、家族や支援者の立場でもある専門職が、具体的な困り事に対応できる体制を整えている。全国13カ寺が開設に名乗りを上げた各支部に対しても、地元でチームができるようサポートしている。

講演会が行われた源光寺。中国自動車道三次インターチェンジのすぐ近くにある
講演会が行われた源光寺。中国自動車道三次インターチェンジのすぐ近くにある

 源光寺の場合は、藤井奈緒理事兼アドバイザーが信頼を置く行政書士でAFP(アフィリエイテッド・ファイナンシャルプランナー)の枝廣祐充子さん(広島県福山市)が起点となった。枝廣さんにはダウン症の長男(19)がおり、同様に信頼できる専門職に声を掛けたところ、三次市や広島市で活動する行政書士、司法書士、終活カウンセラーらが集まった。

 メンバーは、講演会の準備段階からオンラインや会員制交流サイト(SNS)を用い、財団本部、福間玄猷住職を交えて打ち合わせを重ねてきた。

 この日、講演後にあいさつした行政書士の高杉將壽(まさかず)さん(三次市)は「法律や制度は一時的、局所的な対処にとどまる。いざという時のつながりをつくることが大切」と強調。「専門職には得意分野や考え方、環境の違いがある。ネットや電話帳で調べるより、お寺の住職に『いい人を紹介してほしい』と頼んだ方が確実だ」と語り掛けた。

 講演会は、第2回(6月17日)を枝廣さんが「親あるあいだのお金の話」、第3回(8月19日)を司法書士の近村義昭さん(三次市)が「想(おも)いを託す遺言」と題して行う。

福間玄猷住職
福間玄猷住職

 福間住職は「皆さんが場をつくってくれたので、何とか船出ができた。『源光寺に行けば相談できる』と認知してもらえるよう、少しずつ活動を広げたい。地域の人々と倶に支え合い、倶に生きるお寺でありたい」と話している。

 

【用語解説】8050問題(はちまるごーまるもんだい)

 ひきこもりの子どもと、同居して生活を支える親が高齢化し、孤立や困窮などに至る社会問題。かつては若者の問題とされていたひきこもりが長期化し、80代の親が50代の子を養っている状態に由来する。

 

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