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できる備えを一つずつ 本堂で親なきあと講演会

2023年2月3日

※文化時報2022年12月2日号の掲載記事です。

 障害のある子やひきこもりの子が、親のいなくなった後にどう生きていくかという「親なきあと」の問題を巡り、日蓮宗妙瑞寺(菊池泰啓住職、大分市)は11月19日、一般社団法人「親なきあと」相談室関西ネットワーク代表理事の藤井奈緒さん(49)=大阪府八尾市=を招いて講演会を行った。当事者家族や支援者ら約20人が参加。「できることから一つずつ備えて」と呼び掛ける藤井さんの話に耳を傾けた。

「親なきあと」に関する藤井さんの講演に耳を傾ける参加者ら
「親なきあと」に関する藤井さんの講演に耳を傾ける参加者ら

 成年後見制度=用語解説=に関する情報発信や個別相談を実施している「みんなの後見センター」(大分市)との共催。藤井さんは、重度の知的障害のある長女(19)と中学1年の次女(14)を育てながら、全国で親なきあとに関する講演や無料相談を行っている。

 藤井さんは、親は心配事が多すぎてつい「私が死ぬときはこの子を連れていく」「一日でも長くこの子より生きる」と言ってしまいがちだが、障害児・者本人と家族の人生を大切にするために、親なきあとの備えが必要になると強調した。

 その上で、親代わりになる人はいなくても、「親にしかできない備えはある」と指摘。具体的には、情報収集を怠らない▽わが子のことをなるべく多くの人に知ってもらう▽親子ともに人のお世話になり慣れる▽サポートブックなどを書き残す―の四つを挙げ、「一度には無理でも、できることから一つずつ、一緒に備えよう」と語り掛けた。

 最重度の自閉症がある20代の子の母親は「後ろ髪を引かれる思いで、わが子をグループホームに入れた。頑張れる間は自分で面倒を見なければ…と思っていたが、『託すことが大事』と聞けたことで、自分は間違っていなかったのだと思えた」と話した。

学びと語らいの場 相談室開設へ

 妙瑞寺は四半世紀にわたり、葬送に関する市民活動の拠点となってきた。息の長い取り組みが、開かれたお寺の雰囲気を醸し出しており、本堂で行われた今回の講演会もじっくりと聞き入る参加者の姿が目立った。

妙瑞寺。お寺と教会の親なきあと相談室の支部開設へ動き出した
妙瑞寺。お寺と教会の親なきあと相談室の支部開設へ動き出した

 妙瑞寺は、NPO法人「これからの葬送を考える会 九州」の学習会と、さまざまな苦悩を語り合う「なんじゃもんじゃカフェ」を、それぞれ月1回開いている。

 このうち学習会は、NPOの前身の「お墓と生き方を語る会」が1996(平成8)年に発足して以来、実に26年間も続いてきた。当初は、死や葬送に関する葬祭業者と市民の情報格差を埋める目的で始まったが、2011年に九州初の樹木葬墓地「桜葬」が妙瑞寺に開設され、最近は人生をより良く生きるための学びへとシフトしている。

 そうした中、NPOは今年度のテーマを成年後見制度に設定。「みんなの後見センター」を手掛け、浄土真宗本願寺派の僧籍と社会福祉士の資格を持つ葬祭業「ファイン」(大分市)の茶屋元崇喜・統括本部長とも連携している。

 成年後見制度は、認知症の高齢者や知的障害者の財産管理などを巡って用いられる一方、親なきあとの備えの中では知識が必要とされる分野。お寺が知識を持って成年後見人と渡り合い、交渉や連携を行うことができれば、よりスムーズな相談や支援につながる。

 大分県は、19(令和元)年度から「親なきあと相談員」の養成に乗り出し、支援者に知っておいてほしいことを書き残すサポートブックを作成した先進県でもある。

 菊池住職は、一般財団法人お寺と教会の親なきあと相談室(小野木康雄代表理事)の支部を開設することにも意欲を示しており、「親なきあとは非常に深刻な問題。気持ちを分かち合い、語り合う場として、お寺がお役に立てるのでは」と話している。

「お寺がお役に立てる」と語る菊池住職
「お寺がお役に立てる」と語る菊池住職

【用語解説】成年後見制度(せいねんこうけんせいど)

 認知症や障害などで判断能力が不十分な人に代わって、財産の管理や契約事を行う人(後見人)を選ぶ制度。家庭裁判所が選ぶ法定後見制度と、判断能力のあるうちに本人があらかじめ選んでおく任意後見制度がある。

 

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