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介護者カフェと共に 銀山寺で「語らいカフェ」

2024年1月28日 | 2024年7月8日更新

※文化時報2023年12月19日号の掲載記事です。

 障害のある子やひきこもりの子の親が面倒を見られなくなる「親なきあと」について語り合おうと、大阪市天王寺区の浄土宗銀山寺(末髙隆玄住職)は6日、「親あるあいだの語らいカフェ」を初めて開いた。宗が普及に努める介護者カフェ=用語解説=もこの日が第1回。異色の同時開催の船出となり、両方の参加者・支援者計約20人が、同じ空間で午後のひとときを過ごした。

認知症ケア学ぶ

 浄土宗はこの日、介護者カフェの立ち上げ支援員を務める僧侶2人を派遣。東京都健康長寿医療センター研究所(東京都板橋区)の岡村毅医師が「認知症ケアの最前線」と題して講演し、「親なきあと」に関心のある人たちも聴講した。

 岡村医師は「認知症の種類によって症状の現れ方は異なる。原因が分かれば、恐怖心は消える」と指摘。物忘れは老いとともに起き、投薬してもゆっくり着実に進行すると明かした。

(画像・岡村医師:講演する岡村医師)
講演する岡村医師

 日米の製薬大手が開発し、日本でも9月に承認されたアルツハイマー病の新薬「レカネマブ」を巡っては、糖尿病や高血圧の薬が進化しても患者が増えている現状を引き合いに、「認知症の薬ができても、認知症の人がいなくなるわけではない。むしろ増えるだろう」と予測した。

 その上で「人生100年時代には、認知症と共生し、認知症とともに幸せに生きることが求められる」と強調。人は診断を受けて対応しても根本的な不安が解消されないとして、寺院でのケアが最先端であるとの考えを示した。

 質疑応答では「知的障害のある人が高齢になったとき、認知症かどうかをどう判断しているか」との質問や、高齢の親が障害のある子を支える「老障介護」に関する話題も出た。

 講演後は当初、語らいカフェと介護者カフェに分かれる予定だったが、双方の参加者が流れで同じ広間に集い、思い思いに語り合っていた。

(画像メイン・アイキャッチ兼用
:思い思いに語り合う「親あるあいだの語らいカフェ」と「介護者カフェ」の参加者たち)
思い思いに語り合う「親あるあいだの語らいカフェ」と「介護者カフェ」の参加者たち

 会員制交流サイト「フェイスブック」を見て参加したという大阪府枚方市のファイナンシャルプランナー、奈須誠二さん(60)は「知らない話を聞けたし、お寺の雰囲気のおかげで専門職の方々ともすんなりつながれた。お寺でこういう活動が行われていると知ってもらうことが大切ではないか」と話した。

根本的な不安に伴走

 親あるあいだの語らいカフェは、宗教・宗派を超えた取り組みとして、一般財団法人お寺と教会の親なきあと相談室(京都市下京区)が2022年から全国の宗教者に協力を呼び掛けている。銀山寺は14カ所目の財団支部となり、開催を決めた。

 一方の介護者カフェは、介護中や介護を終えた檀信徒と地域住民らに、情報交換や息抜きの場を提供する浄土宗の活動。20年度から宗の事業として行われており、銀山寺は全国27カ所目の開催寺院となる。

(画像・山門:親なきあと相談室ののぼりが掲げられた山門)
親なきあと相談室ののぼりが掲げられた山門

 この日は岡村毅医師の講演が行われる前に、介護者カフェ立ち上げ支援員で浄土宗西蓮寺(山形県米沢市)の伊藤竜信住職があいさつ。「悩みや苦しみを話し合える場所をつくれないかと始まった活動。『親なきあと』の問題も介護と密接な関係があり、共に考えたい」と述べた。

 講演後は、お寺と教会の親なきあと相談室の小野木康雄代表理事が「介護者カフェと同様、障害のある子の親御さんの根本的な不安に伴走してほしい」と呼び掛け、藤井奈緒理事兼アドバイザーは「子どもたちが『助けて』と言える先の一つとして、お寺が支え合う場になっていただければ」と語った。

 末髙隆玄住職は、認知症になった檀家との出会いが介護者カフェ開設の動機となった。他のお寺の取り組みを参考にしようとしていたところ、お寺と教会の親なきあと相談室の存在を知った。さまざまな機会を捉えて学びを深めながら、地域との連携を強めている。そうして出会った天王寺区社会福祉協議会のメンバーもこの日のカフェに参加し「すてきな場。とても心強くてありがたい」と感想を語った。

 銀山寺は今後、8月を除く偶数月の第1水曜に語らいカフェと介護者カフェを同時開催する。末髙住職は「介護に携わる方々のよりどころとして、介護する方とされる方が孤立しないよう、微力ながらお力になれれば」と話している。

(画像・末髙住職:あいさつする末髙住職)
あいさつする末髙住職

【用語解説】介護者カフェ
 在宅介護の介護者(ケアラー)らが集まり、悩みや疑問を自由に語り合うことで、分かち合いや情報交換をする場。「ケアラーズカフェ」とも呼ばれる。主にNPO法人や自治体などが行っているが、浄土宗もお寺での開催に取り組んでいる。孤立を防ぐ活動として注目される。

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