2023年8月23日
打ち明け過ぐるも悪(あ)しく、物隠すように見ゆるも悪しきなり。
――作家、森鴎外(1862~1922)
人と話しているときに、自分の思っていることをどこまで正直に言うか悩む人は多いと思います。特に自分の苦しみを誰かと分かち合いたいときは、その線引きがより難しくなります。
森鴎外の残したこの言葉は、人に何かを打ち明けることや何かを隠すこと自体を否定するものではありません。それらが行き過ぎて、相手を傷つけてしまうことを警告しているのです。
相手に苦しみを打ち明けられて、共感するあまり苦しくなった経験はありませんか?または相手に何かを隠されているように感じて、不安になったり傷ついたりしたことはないでしょうか?
相手を大切に思っているからこそ、言いたいことや隠したいことが生まれます。しかし、お互いの思いがすれ違って、傷つけ合ってしまうのです。
とはいえ、苦しみを心の奥底に封じ込めて、誰にも悟られないように生きるほかないのであれば、ほかならぬ自分自身を傷つけることになります。
相手も自分も傷つけないためには、相談相手をいくつも作ることが重要です。
身近な人に相談することと、他人に相談することを分けましょう。そうすれば、打ち明けるべきではない相手に打ち明けることも、外から見て分かるほどに思い悩むことも少なくなるのではないでしょうか。
家族や友人にしか大切なことを相談できないと考えるかもしれませんが、身近な人だと話が深いところまで行き過ぎてしまう危険性があります。言いたくないことも、隠せなくなってしまうでしょう。
現代には、行政にも民間にも悩みに応じた相談窓口が用意されています。お寺のお坊さんが相談に乗ってくれることもあります。自分に合った相手を見つけるのは時間がかかるかもしれませんが、ぜひ探してみてください。