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「文化時報」コラム

〈70〉看護・介護現場の暴力

2024年3月26日 | 2024年10月2日更新

※文化時報2023年12月5日号の掲載記事です。

 訪問看護・介護の現場で起こる暴力やハラスメントをご想像いただけるだろうか? 従事している専門職は女性が多い。利用者と一対一になる場面もリスクはあるが、家族から暴力やハラスメントを受けるケースもある。

 暴言や不必要な身体接触は数えきれないくらい起こっているだろう。それどころか、殴られるなどの暴力や睡眠薬入りのお茶を飲まされたという報告もある。これはハラスメントではなく犯罪被害である。

 実際に被害にあった訪問看護事業所の関係者によると、睡眠薬を飲まされても気が付かない場合もあるらしい。「異常に眠いのは疲れているだけ。頑張らねば」と気力を振り絞って業務に当たっているような実態もあるそうだ。看護師や介護士の並々ならぬ精神力と、利用者やその家族を疑わないという気持ちに涙が出そうになる。

 このような犠牲の上に成り立っている「在宅看護・介護」とは何だろうか? と考えてしまう。もっとも、大多数の利用者やその家族には当てはまらないだろう。しかし、ごく一部とはいえ、被害にあっている専門職がいることも忘れてはならない。

 「犯罪被害に遭っても、利用者を悪く思わないのは異常である」という研修会に参加した。グループワークでは「たとえゲンコツで殴られても、利用者は悪くない。何か理由があるはずだ」と考えてしまう専門職が少数だがいた。

 普通に暴行事件だが、看護・介護現場では、「未熟だから殴られる」という被害者をさらに傷つける思考が、専門職側に根強く残っているのも確かだろう。

 このような実態を知らずに、都合のいい時だけ「心のケア」へ訪れる宗教者が受け入れられるとは思えない。

 「心のケア」というならば、利用者やその家族の不安と悲しみが暴言となって表れる場に立つことだろう。看護師や介護士はその最前線で仕事をしている。安全な場所できれいごとを言う宗教者を頼る人はいない、と心得た方がいいだろう。

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