2022年9月8日 | 2022年9月27日更新
居宅介護支援マネージメントの立ち上げを行い、これまで大勢の利用者を担当した谷本力也さん。在宅生活の暮らしぶりや家族背景など、広い視点から中立的な立場で、利用者の計画書を作成してきた。
(26年仕事を続けられた、あの言葉 谷本力也さん㊤ からつづく)
ケアマネジャーの仕事は、地域包括支援センターから連絡が来ることで担当になる利用者が割り当てられる。「とても困難なケースの方」と深刻な声で電話がかかってくることも多い。
谷本さんは「先入観を持たないで、一度会いに行くようにしています。利用者さんから見て1人知り合いが増えたと思ってもらえればいいのです」と話す。「困難」と言われた人でも、接し方一つでスムーズに支援できることもあるという。「どこまで心を開いてもらえるかは、こちらの出方によりますね」
初回のインテークを大切にし、まず自宅を訪問。その場ですぐには契約書を交わさず、必ず利用者自身の考えを聞き、様子をうかがう。多くのケアマネジャーは、初回の訪問で契約書に判を押してもらうことがざらにあるというが、谷本さんは決してしない。
2、3日後に再び訪問し、お互いに納得した状態から、支援がスタートする。
それでも、全てが順調にいくとは限らない。
野良ネコが住み着いているごみ屋敷のような自宅を訪れ、物があふれていて床が今にも抜けるのではないか、と心配しながら利用者と話すこともある。「他人から見たらごみでも、利用者さんには価値があるもの。どうしたらごみだと認識して捨てる気持ちへ持っていけるかを、考えます。やみくもに捨てろとは言えません」
利用者と向き合うのは、ケアマネジャーだけではなく、訪問看護師やヘルパーも同じだ。関わる全てのスタッフに気を配らなくてはならない。
利用者の通うデイサービスや事業所への訪問はできる限り行い、様子を見に行く。今は施設内の利用者を約90人担当。住み慣れたわが家を離れ入所した方々の不安を、安心に変えたいと考えている。
ヘルパー同士の中で起きる問題にも対処する。「それぞれの言い分が違ってうまくいかない時は、職員同士の情報共有ができていないこともあります。スキルが違っても根本は一緒。利用者さんの『らしさ』を知るところから始めて、関係性を築いてほしいです」と語る。利用者目線で支援を行う日々が続く。
>>グリーフケアで分かった事実 谷本力也さん㊦ へつづく