2023年1月20日
家族などのふりをして金銭をだまし取る「特殊詐欺」。今でも多くの高齢者が被害に遭っています。高齢者施設では「入居者は直接電話に出ることも、自分でお金を振り込むこともないので、心配ない」と大半の方が思っていることでしょう。しかし、油断は禁物です。コロナ前にこんなことがありました。
「祖母がいつもお世話になっています」と1人の男が施設にやって来ました。ある入居者に近づき「ばあちゃん。元気だったかい」と声を掛けます。そして「ばあちゃんの好きなお菓子買って来たから、部屋で食べよう」と2人で自室に向かいました。
お気付きの通り、彼は詐欺師でした。認知機能が低下して孫の顔が分からない高齢者に接触しお金をだまし取るのが目的です。実際に言葉巧みに自宅のキャッシュカードの保管場所と暗証番号を聞き出し、自宅の鍵を受け取り、堂々と「ありがとうございました」と職員にあいさつをして帰っていきました。この女性の預金口座からは多額の現金が引き出されていました。
介護職員は入れ替わりが激しいこともあり、よほどの小規模な施設でない限り、入居者全員の家族の顔までは覚えていません。孫やおいのような親類であれば簡単に「なりすまし」ができるでしょう。
もちろん、多くの施設では来館者に名前や連絡先、面会先(入居者名)を記入してもらいます。しかし「書いたらそれでOK」で、その場で記載内容を細かく確認されることはまずありません。身分証明書の提示も求められません。もし、実在しない入居者名を書いたことをとがめられたら、言い逃れして立ち去ることもできるでしょう。詐欺犯にとっては意外と侵入しやすい環境といえるのではないでしょうか。