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臨床宗教師がいのちのケア ホスピス・アミターバ

2022年9月1日

※文化時報2022年6月10日号の掲載記事です。写真は沼口医院提供。

 傾聴移動喫茶「カフェデモンク」=用語解説=に関わる超宗派の宗教者らによる「第2回カフェデモンクサミット」が5月28日、オンラインで行われた。岐阜県大垣市の在宅型ホスピス「メディカルシェアハウス・アミターバ」に常設されたカフェデモンクについて、医療法人徳養会の沼口諭理事長らが取り組みや事例を報告。医療・介護従事者を含む118人が、宗教者らによる「いのちのケア」への理解を深めた。

アミターバのカウンターで談笑する利用者たち
アミターバのカウンターで談笑する利用者たち

カフェデモンクサミット

 アミターバは、臨床宗教師=用語解説=が常駐する在宅型ホスピスとして、2015年に沼口医院の敷地内に開設した。主に末期のがん患者が最期まで穏やかに暮らすための共同施設で、居室は18室。併設の訪問看護・訪問介護ステーションなどを通じ、24時間体制でサポートを受けられる。

 臨床宗教師としては、田中至道さん(浄土真宗本願寺派)、隠一哉(なばり・はじめ)さん(真宗大谷派)、不破英明さん(同)の3人が雇用されており、医療職や介護職らと協働。施設内には、月・水・金曜の午後に開店する常設型の「カフェデモンク・水都おおがき」がある。

 沼口理事長は報告の中で、スピリチュアルケア=用語解説=とグリーフ(悲嘆)ケアを合わせた「いのちのケア」を理念にしていると説明。カフェデモンクでは「お別れ会」や「偲ぶ会」も開催され、看取り後の遺族との関わりやスタッフのケアにも活用されていると紹介した。

 カフェデモンクサミットは、地域社会に根差した宗教者のスキル活用や、臨床宗教師の社会実装を目指した情報共有の場。曹洞宗通大寺(宮城県栗原市)の金田諦應住職らが中心になり、今年2月に第1回を開催した。次回は7月30日を予定している。

「カフェデモンク・水都おおがき」について報告するアミターバのメンバーら
「カフェデモンク・水都おおがき」について報告するアミターバのメンバーら

制度外で実力発揮

 メディカルシェアハウス・アミターバは、緩和ケア病棟と在宅の中間として位置付けられる施設だ。健康保険や介護保険の点数制度を使わずに運営することで、臨床宗教師を前面に出した「いのちのケア」を可能にしている。

 サミットでは、「絵を描いている時なら、痛みを忘れられる」と臨床宗教師に語った女性患者が、家族と医療チームの協力を得て、カフェデモンクで絵画展を開いた事例を紹介。スタッフの一人は「生きることは、生命の維持だけではない。ご家族は、生活や人生でご本人が大切にしてきたことを私たちに伝えようとしていた」と語った。

 別の事例では、男性患者がそばを打って振る舞ったことや、カフェデモンクで飲むコーヒーを「幸せのコーヒー」と呼び、スタッフにも勧めていたというエピソードが紹介された。報告には家族も同席し、「病人としてではなく、一人の人として扱ってくださった」と感謝した。

お別れ会も行われる(一部画像を加工処理しています。沼口医院提供)
お別れ会も行われる(一部画像を加工処理しています。沼口医院提供)

 自身も真宗大谷派の僧侶である沼口諭理事長は「宗教者が医療現場に入る際の障壁を下げる模索を続けてきた」と説明。臨床宗教師のいる雰囲気が、いのちのケアに大きく貢献していると強調した。

 ただ、制度外での運営には、臨床宗教師の人件費を施設利用料に上乗せせざるを得ないという側面もある。

 沼口理事長は「金額的な問題でアミターバに入れない方もいる」と明かした上で、「値段に見合う以上の価値を社会に認めてもらう必要がある」と話した。

【用語解説】カフェデモンク(宗教全般)

 2011(平成23)年の東日本大震災を機に始まった超宗派の宗教者による傾聴移動喫茶。コーヒーやスイーツを振る舞い、人々の心の声に耳を傾ける。曹洞宗通大寺(宮城県栗原市)の金田諦應住職が考案し、僧侶や修道士を意味する英語のモンク(monk)と文句、悶苦の語呂合わせで命名した。全国の災害被災地や緩和ケア病棟など14カ所に広がっている。

【用語解説】臨床宗教師(りんしょうしゅうきょうし=宗教全般)

 被災者やがん患者らの悲嘆を和らげる宗教者の専門職。布教や勧誘を行わず傾聴を通じて相手の気持ちに寄り添う。2012(平成24)年に東北大学大学院で養成が始まり、18年に一般社団法人日本臨床宗教師会の認定資格になった。認定者数は21年9月現在で214人。

【用語解説】スピリチュアルケア

 人生の不条理や死への恐怖など、命にまつわる根源的な苦痛(スピリチュアルペイン)を和らげるケア。傾聴を基本に行う。緩和ケアなどで重視されている。

 

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